で、前回(事業用運転資金って大事らしい (1))の続きですが、
少し前にROIC (投下資本利益率)を勉強したのですが、基本的には計算しやすいので、純資産+有利子負債を使っています。
ですが、投下資本=事業用運転資金(売上債権−買入債務+棚卸資産)+有形固定資産の式を見ると、企業の価値が大きくなる理由が判るので詳しく見てみたいと思います。
- 投下資本の項目を説明しますと
- ・売上債権 ----- 顧客から回収できていないお金になります。
・買入債務 ----- 業者に支払っていないお金になります。
・棚卸資産 ----- 在庫です。
・固定資産 ----- 土地や建物、あとは設備や機械になります。 - 「作って売る」をお金の流れで見てみると
- 簡単に企業のお金の流れをまとめてみますと、
1. 材料を仕入れる。(お金を払う)
2. 製品を作る。(在庫が増える)
3. 製品を売る。(お金を回収する)
という流れだと思います。
全て現金ですれば非常に計算がしやすいのですが、そうは行かないのが企業なので手形や掛けでの取引を行います。
※ 手形 - Wikipediaや買掛金 - Wikipedia等を参照してください。僕も詳しくは・・・・(汗) - 企業のお金の流れを考えると
- 要するに、現金で取引を行わない事によって現金の流れに「差」が出てきます。
それを踏まえてもう一度整理しますと、
1-1. 500万円の買掛金で材料を仕入れる。
2-1. 製品を作るのに1ヶ月かかった。 2-2. 支払い期日が来たのでお金を500万円を支払った。
3-1. 取引先が1000万円の売掛金で製品を買ってくれた。
3-2. 1ヶ月後にやっとお金が入ってきた。
利益率の高い製品を作ったとしても、現金が入るまでに支出と収入に時間の差が出てきます。
結果的には入ってくるので、企業の価値に影響は無いように思えますが、結構大きな問題になってきます。 - 事業用運転資金が影響する理由-1
- 事業用運転資金=売上債権−買入債務+棚卸資産となっていますが、企業が大きくなっていくとどうなるか考えてみたいと思います。
1. 仕入れる量も大きくなるので、買入債務が大きく(↑)なる。
2. 売れるはずなので、大量生産でのコストカットなども考えられるので増産ですよね!
そうなりますと棚卸資産(在庫)が増加します(↑)。
3. 売れば売れるほど、売上げ債権も大きく(↑)なる。
という状態になると思います。
有形固定資産を5億円で変化しないとして、適当な数字に置き換えてみますと、
・A社 経営者がこまめに先を予測して、仕入れや在庫をちゃんと管理しています。
11億円の運転資金(10億円の売上債権−5億円の買入債務+1億円の棚卸資産)+5億円
・B社 どんぶり勘定の経営者です。
15億円の運転資金(17億円の売上債権−8億円の買入債務+5億円の棚卸資産)+5億円
両社を比べると+6億円もの事業用運転資金が増加しました。
利益率は高い製品を作っていますし、売上げも伸びており、企業の経営は順調そうですが、B社の方が6億円分資金繰りが厳しくなっています。 - 事業用運転資金が影響する理由-2
- で、ROICの式に当てはめて見ます。
A社、B社共に純利益は2億円の同額だったとします。
ROIC:A社 = 2億円÷11億円 = 18.2%
ROIC:B社 = 2億円÷17億円 = 11.8%
となります。
企業が大きくなればなる程、生産の規模は大きくなるので、買入等のお金は増えますし、在庫も増えやすくなってしまいます。
と言うことは、売上げの伸びも重要ですが、事業用運転資金の差は良い企業と悪い企業では、ROICの差が毎年毎年広がって行くわけですよね。
長期投資をするにあたり、これは結構重要な事だと思います。
ROICは企業がどれだけ効率良く利益を上げているかの指標なので、事業用運転資金にはもう少し注目してみたいと思います。
※ 日産自動車が立ち直った大きな理由の一つが、ROICの改善です。
そのお話はざっくり分かるファイナンスで、読みました。
ただ、注意しなければいけないのが、業種によってこのお金の流れが仕組みが大きく変わりますので、その点はもう少し勉強して書いてみたいと思います。